トルドー首相、失態続きで政権維持に黄信号:コラム

278

再選を目指すジャスティン・トルドー首相だが、この4年間の失態続きで、政権維持に明々と黄信号が灯っている。

トルドー首相といえば4年前に「Sunny Way」で政権奪回に成功し、世界ではそのイケメンぶりも話題となった。爽やかな風貌に、当時43歳(現在47歳)という若さ、さらに今でも人気が高いピエール・トルドー元首相の長男というブランドも相まって、カナダ国民はそれまでの保守党の締め付け政権からの脱出に、政治家として経験が浅いが彼にカナダの未来を託した。

出発は上々だった。第1次内閣で閣僚は男女同数とし、フェミニストぶりをアピール。政権発足から1カ月後の国際環境パリ会議では「カナダはここに帰ってきた」と環境問題に真剣に取り組む姿勢を見せ、拍手喝采を浴びた。

しかし徐々に経験の浅さとお友達内閣によるボロが現れた。まず政権を取って間もなく、公約としていた選挙制度改革を早々に破棄した。これには新民主党やグリーン党、さらにトルドー首相を支持した若者から批判が起きた。

その後も脇の甘さが露呈するスキャンダル続き。あげると切りがないが、決定的にトルドー首相の信頼を失墜させたのは、SNCラバランスキャンダルだった。

SNCラバランスキャンダルとは、ケベック州の大手建設会社SNCラバラン社がカダフィ政権下のリビアでの政府受注事業のために賄賂を贈ったとされる贈賄容疑で追訴されたことに関連して、司法取引で裁判を打ち切るよう首相や閣僚、スタッフが当時のジュディ・ウィルソンレイボルト法相兼司法長官に圧力をかけていたとされる疑惑。

全国紙グローバル&メールが今年2月に掲載し、疑惑が明るみに出た。その時トルドー首相は「記事はウソだ。そうした事実はない」と記者会見で断言した。

しかしその後、事実であることが明らかになると、トルドー首相はじめ自由党幹部は、「9000人の雇用を守るため」という苦しい言い訳をし、「雇用を守るために政権は正しいことをした、不適切な行為はなかった」と言い張った。

野党の追及を逃れるために当事者を呼んで開いた公聴会も途中で無理やり打ち切った。さらにトルドー首相は、司法取引はしないと首相らの圧力を跳ね除けたウィルソンレイボルト元司法長官と彼女を支援した元保健相を除名処分にした。のちに9000人という数字さえ誤りだったことが分かった。

そして8月、カナダの連邦倫理委員会はトルドー首相の不適切な働き掛けがあったと認定した。

選挙期間中には、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで高校教師をしていた時に、学校のイベントで顔を黒く塗ってコスチュームパーティに参加していた写真をアメリカの雑誌社が掲載した。

一方で、この4年間で守った公約は「大麻合法化」のみ。国民が抱いた4年前の期待は失望に変わっていった。

特に若者がトルドー自由党から離れているとされている。

その背景にはトルドー首相が約束した環境問題への対策への失望がある。炭素税導入には踏み切ったが、それ以外に温室効果ガス排出量を削減する有効な手段は講じていない。

さらにトランスマウンテン・パイプライン建設を承認するなど、排出量が増加する政策を打ち出し、これが環境対策につながると主張している。

こうした数々の失態がトルドー首相の信用をガタ落ちにし、投票日を間近に控えた今でも延々と尾を引き、厳しい選挙戦を強いられている。

国民はトルドー政権にどんな判断を下すのか?各社世論調査は、僅差でトルドー自由党の少数派政権と予想している。