保守党がケベック州補欠選挙で圧勝

217

 

ケベック州シクーティミ-レ・フィオード選挙区で連邦補欠選挙が実施された。18日の投開票で勝利したのは保守党リチャード・マーテル氏。2015年総選挙で自由党が獲得した選挙区だった。

 

苦戦を強いられた自由党

 

自由党はリナ・ボーヴィン氏を擁立したが5000票以上の差をつけて大敗した。

得票率は、マーテル氏が52.7パーセント、ボーヴィン氏が29.5パーセント。保守党にとっては前回総選挙では、自由党、NDP、ケベック連合にも及ばず4番目に終わった選挙区だった。

今回の補欠選挙では、連邦保守党アンドリュー・シェア党首が選挙区入りし、積極的な選挙活動を展開した。シェア党首にとっては保守党党首に就任して初のケベック州での補欠選挙。来年に控えた総選挙を見据え、まずまずの結果となった。

自由党は補欠選挙どころではなかった。今月は8日から主要7カ国(G7)首脳会議がケベック州で開催された。5月31日にアメリカが発表した鉄鋼・アルミニウムへの高関税が主要議題を越え、会議の中心になった。

G7が終了した直後にはトルドー首相が米国ドナルド・トランプ大統領やトランプ政権閣僚から誹謗中傷を受けるという出来事も。

北米自由貿易協定(NAFTA)の交渉も暗礁に乗り上げたままで、トランプ大統領が2国間自由貿易に関心を示すなど、国際問題に追われた。

それにしても、自由党にとっては前回選挙に比べて得票率が開きすぎた厳しい結果になった。

 

関連記事 トランプ政権のトルドー首相攻撃に与野党が団結

 

保守党の勝因は、NDP、PQの脱落

 

自由党政権が国際問題に追われ、ケベック州での補欠選挙に集中できなかったのは事実だが、自由党候補の得票率は前回選挙とほとんど差がなかった。

2015年選挙では、自由党が31パーセント、次いで新民主党(NDP)29.7パーセント、ケベック連合党(PQ)20.5パーセント、保守党は16.6パーセントと苦戦した。

しかし今選挙では保守党が過半数を超える票を獲得した。一方でNDP、PQが激減した。保守党の圧勝は、自由党支持が後退したわけではなく、他の2党が弱すぎたと各専門家は見ている。

今回の3党の結果は、NDPが8.7パーセント、PQは5.6パーセント、グリーン党は3.1パーセント。ほとんど勝負にならなかった。

NDPは今年党首が変わった。ケベック州出身トーマス・マルケア前党首から、オンタリオ州出身インド系カナダ人ジャグミード・シング党首に交代した。シング党首決定については党首選で圧倒的な支持を得たが、唯一ケベック州出身党員からは不満の声が噴出した。そのため、党内からですら不満が出る中、選挙では厳しい戦いになるのではとみられていたが、それが的中した。

PQは党内が分裂状態で、とても選挙を戦える状態ではなかった。

当初はこれらの動きが自由党に有利に働くとみられていたが、選挙結果では保守党に票が回ったことが明らかになった。

 

2019年の前哨戦?! 次の補欠選挙もケベック州

 

自由党ジャスティン・トルドー首相にとって今回の敗戦は、2013年に党首に就任して以来、補欠選挙では初めて。これまで一度も負けたことのなかったトルドー神話が崩れた。

今回の選挙は来年の総選挙に向けて、ケベック州で自由党が有利にならない厳しい選挙戦になるとの予感を漂わせた。

それ以上に厳しい戦いとなるのはNDP。ケベック州での苦戦は想定内ではあったが、今回の補欠選挙ではそれが現実となった。

NDPでは前週トーマス・マルケア前党首が議員を辞職した。今月末にはマルケア前党首のケベック州アウトレモント選挙区で補欠選挙が実施される予定になっている。またもケベック州での補欠選挙。NDPがこの選挙区を守れるのか、注目される。