これまでオーバーブッキングや荷物紛失で泣き寝入りしていた飛行機利用者にとって朗報となるだろうか。
カナダ運輸庁が定めたカナダで飛行機を利用する乗客が航空会社の責任において影響を受けた場合に補償を受けることができる新たな基準が15日から開始された。
同日モントリオール空港で記者会見したマルク・ガルノー運輸相は、家族全員で旅行という時に購入した航空券が何らかの理由で無効になれば、その負担増はかなりのものになるという認識の中で、少しでも飛行機旅行の負担が軽減されることを考慮した内容になっていると語り、「フェアで、シンプルで、明確」と説明。自由党政権が発足して以降ずっと検討してきた案件であり、今日から第1段階が実施されると語った。
今回の新基準はカナダ入国、出国、国内線とカナダを飛行する全ての航空会社に適用される。
オーバーブッキングなら最高で2,400ドルを補償
7月15日から実施される新補償内容の主なものは以下の通り:
- 航空会社で対応できる理由によって搭乗を拒否した場合には航空会社は最高で2,400ドルを補償すること。オーバーブッキングなどで搭乗できなかった場合がこれにあたる
- 航空会社が預け入れ荷物を紛失したり傷つけたりした場合には最高で2,100ドルを補償、預け入れ料金を返金しなければならない
- 乗客の権利を簡潔に明確に伝えること
- フライトの遅延やキャンセルについて最新情報を提供すること
- すでに搭乗し駐機している状態で飛行が遅延する場合、3時間を過ぎても飛行機が出発しない場合は降機できるようにすること、すでにゲートを離れて駐機している場合は、トイレの使用を許可し、食料や飲料、エアコンディショニングを提供すること
- 楽器の預け入れについて明確な規則を提示すること
12月15日から実施される新規則:
- 安全に関する理由以外で航空会社の都合でフライトが遅延・キャンセルした場合、大手航空会社で3時間から6時間遅れた場合400ドル、6時間から9時間の遅れで700ドル、9時間以上で1,000ドルを補償すること、小規模航空会社の場合は、各125ドル、250ドル、500ドルとなる(これらはオーバーブッキングなどの規則違反と重なった場合は、加えて補償しなければならない)
- 飛行機の出発が2時間以上遅れる場合は、食料や飲料、WIFIなどのコミュニケーション手段を無料で提供すること
- 3時間以上フライトが遅れた場合、次の可能なフライトへの予約をしなければならない。その場合、遅れたフライトの座席クラスと同等であること、次の可能なフライトが9時間以上先になる場合は可能であれば他の航空会社のフライトを予約すること
- 14歳以下の子供が同乗の場合、追加料金なしに親に近い席を用意すること
航空会社寄りの基準と批判の声も
新基準を設定する背景には、これまでカナダで起こった航空会社の乗客に対する不適切な対応がある。乗客からは不満の声が上がっていたが、これまで政府はほとんど何もしてこなかった。
今年、オンタリオ州オタワで、エアトランザットが長時間ゲートから離れて空港に駐機したまま乗客が閉じ込められた状況だったにもかかわらず、エアコンディショニングも、食料も飲料も提供せず、非難を浴びた。
ガルノー運輸相は3年半をかけて練り上げた規則と自信を見せたが、乗客の権利を守る団体は、アメリカやヨーロッパの基準に比べると不十分と言う。
補償の条件に「航空会社の対応できる範囲」という条件が付けられており、悪天候や緊急の機材不良、空港側の問題、救急患者対応などの理由では補償対象外となるため、航空会社寄りの基準になっていると批判している。
一方で、国内航空会社は国際法に違反している可能性や乗客を混乱させるとして、提訴している。