オンタリオ州政府が環境対策制度撤廃へ

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オンタリオ州政府は、自由党前政権時代に導入した環境対策制度「キャップ&トレード制度」から撤退すると発表した。

今回の措置は6月29日に発足した進歩保守党(PC)新政権が、選挙期間中に公約として掲げていた同制度を含めた炭素税の撤廃を実現する第1歩となる。

PC政権は撤退を実現することで、ガソリン代1リットルにつき10セント安くするほか、光熱費も安くすることを目指している。

廃止の理由についてPC政権は、キャップ&トレード制度は同州民や企業に約80億ドルを課していたにもかかわらず効果はほとんどなかったとしている。

ダグ・フォード州首相は「選挙で約束した通り、州民の懐にお金を返すための第1歩」と公約を守ることを強調した。

今回のオンタリオ州政府の発表について、連邦政府キャサリン・マッケナ環境相は「オンタリオ州政府が気候変動への対策に関心がないことが明らかになった」と批判。カナダ政府としては今後も環境と経済の両立を目指して対策を続けると声明を発表した。

 

企業への補償政策などキャップ&トレード制度撤退の対応策は?

 

キャップ&トレード制度が導入されて以降この制度を利用している企業からしてみれば突然の廃止は経営に影響する。

オンタリオ州の企業はこの制度で約30億ドルに値する許可証を購入しているという。これらの費用が無駄になる可能性がある。

多くの専門家は、制度から撤退するのであれば、州政府は企業に対して何らかの補償をしなければならなくなるのではと予想している。もし州政府が補償しなければ州政府を相手に企業が訴訟を起こす可能性も指摘している。

さらに、州政府が同制度から撤退する場合でも一定の順序を踏む必要があるという。

オンタリオ州は、ケベック州とアメリカのカリフォルニア州とともにウエスタン・クライメイト・イニシティブのキャップ&トレード制度に参加している。同制度から撤退するにはまず1年前にその旨を告知しなければならない。

さらに州議会での法制度改正も必要となるという。撤退を発表しても、まだまだ必要な手続きが多く、即実施、即効果という訳にはいかないのが現状だ。

また同制度を基本とした環境対策制度を利用している州民や企業には、州政府は順に精査して対策を講じるとしている。

 

炭素税廃止は可能か?

 

フォードPC政権が誕生したオンタリオ州だが、フォード氏が党首選に立候補する前から、PCは炭素税制度の廃止を訴えていた。フォード氏が就任して急に廃止を訴えたわけではない。

炭素税制度導入は連邦自由党政権の環境対策基本方針であり、州政府が廃止すると宣言すれば実行できるという単純なものでもない。

連邦自由党政権は全国横断的な炭素税導入を2019年1月から実施するとすでに発表している。

連邦政府のいう炭素税には、ブリティッシュ・コロンビア州などが導入している炭素(お温室効果ガス)を排出する行為(例えば自動車を走らせるためのガソリン代など)に直接課税する方法のほか、キャップ&トレード制度のように温室効果ガスを総合的に減らす制度も含まれている。オンタリオ州以外ではケベック州が導入している。

オンタリオ州が同制度に代わる炭素税か同等の環境対策制度を導入しない限り、連邦政府の炭素税制度を強制的に導入させられることになる。その場合、自ら導入した制度とは異なり、炭素税による歳入の用途を州政府独自では決められず、連邦政府の指示を受けなければならない。

今年9月までには、炭素税もしくは同等の環境対策を提案することを連邦政府は求めている。

 

炭素税導入反対派が台頭

 

炭素税導入反対を表明しているのは、オンタリオ州PC政権だけではない。

サスカチュワン州は2016年に連邦政府が導入を発表した直後から反対を表明している。さらにアルバータ州でも現在野党の連合進歩保守党(UPC)ジェイソン・ケニー党首が炭素税廃止を訴えている。2019年に総選挙が実施されるアルバータ州では炭素税が争点になる可能性が高い。そして保守派のUPCが優勢と言われている。

そうなれば、サスカチュワン州、オンタリオ州、アルバータ州が反対に回る。さらにマニトバ州も現在の制度では不十分と言われている。

2019年には連邦総選挙も控えている。炭素税導入も争点の一つになると予想されている。

現在のところ、炭素税導入に積極的なのはBC州とケベック州。BC州では2008年から国内で初めての試みとして導入されている。