参議院選挙投票日にカナダ・バンクーバーで選挙権について考える

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Parliament of Canada in Ottawa, ON; Photo by ©Mako Ogura
カナダ国会議事堂、オンタリオ州オタワ市。Photo by ©Mako Ogura

フリーライターのひとり言:バンクーバーから世界を見れば

カナダはこの夏熱い選挙戦が繰り広げられることが予想される。10月に総選挙が実施されるからだ。実際にはもうすでに始まっている。

相変わらずどこに行っても人気者のジャスティン・トルドー首相だが、実は今秋の選挙に向け万全というわけではない。

2015年10月の選挙で自由党が過半数を大きく上回る圧勝で政権を取り、首相となった。野党時代に党首として不安はあったが、とりあえずやらせてみよう、10年続いた保守党政権にはうんざりという国民の気持ちが後押しした大勝だった。

今でも歴代首相では断トツの人気を誇る父ピエール・トルドー元首相の長男という本人の実力とは無関係なところでの期待もあった。野党時代に大した実績もないままにジャスティン・トルドーがカナダの首相になったのにはそういう理由からだった。

取りあえずは人気先行で、やっているうちに何とかなるのではという期待がカナダ国民全体にあったことは間違い。果たして4年経ってみて結果はというと、「やっぱり未熟だった」、という感じは否めない。口ばっかりで実行が伴わない。そんな4年間だった。

そのせいだろうか、ここにきてトルドー首相への支持率は結構なところまで下がっている。気が付けば自由党の支持率もなんと保守党に追い抜かれてしまった。支持率なんて結構上がったり下がったりするから、まあこれからというところだろう。

と、カナダの選挙に気を取られている間に、日本でも選挙がやってきた。今は在留邦人でも小選挙区、比例代表と両方とも投票できる。できないのは最高裁判所裁判官への○☓だけである。

カナダの選挙は分かりやすい。基本的には、自由党、保守党、新民主党(NDP)の3大政党があり、最近勢いを増しているグリーン党の4党で基本的には争う。今年新たにカナダ国民党が発足し、ケベック州ではケベック連合党がようやく盛り返してきたが、基本的には4党である。

一方、日本はというと、政党がいっぱいある。もともと政党数が多くて、名前がコロコロ変わって、政策の違いも分かりづらかった上に、さらに政党が増えている。

これはいかんとネットで、政党の政策とか、誰が立候補しているとか、チェックした。

与党は分かりやすいが、野党はいまいち。みんなほぼ同じような政策なのに、なぜあんなにバラバラに分かれているのだろう?すごく分かりづらい。だからどこに入れていいか分からないから、誰に投票しても所詮同じことだから、選挙に行かないという言い訳を与えてしまうことになる。

日本では選挙は日曜日にあるから、休みの日にわざわざ行きたくないのだ。

海外の在留邦人は、期日前投票扱いのため、投票日はすごく早い。バンクーバーでは、7月5日から投票開始、7月13日に締め切られた。1週間も前の話だ。

投票した後も気になって、ちょくちょくネットで選挙の話題をチェックしたりする。すごいことになっているみたいだ。自由党は政府として、海外では日本ではDemocracyが保障されてとか、Rule of Lawとか言っている割には、国内での選挙戦でやっていることが結構せこい。どこの国もそんなものかもしれないが。

そうこうしているうちに、あっという間に投票日がやってきた。

投票したからには結果が気になる。もうすぐ午後7時。日本は20日の午前11時。眠りに着く頃にはすでに結果が出ているだろうか?

それとも明日の朝を楽しみにして早く眠りにつこうか。待ちきれずに一晩中起きているかもしれない。

海外で暮らすと分かる選挙権の重要さ

日本国籍を有している日本国民はどこにいても選挙権がある。だから在外選挙制度で海外から投票できる。

カナダの場合も、カナダ市民権を有している人は選挙権がある。カナダでは二重国籍、もしくは多重国籍の所有が許されているで、カナダの選挙権を有しながら他国の選挙権を有している人もたくさんいる。しかし永住権者には選挙権はない。

日本の場合は単一国籍制度のため、日本の選挙権があるということは、カナダの選挙権はないということになる。

カナダの場合、市民権と永住権の最大の違いは、この選挙権にある。日本ではどうせ行っても変わらないと選挙権を簡単に放棄するが、カナダのように多国籍国家の場合、選挙権がないというのは非常に地位が低いと感じることが多い。

なぜなら選挙権がないコミュニティの意見は政治に反映されないからだ。選挙権があるからこそ、政治家は必死になってそのコミュニティの票を取ろうと、そのコミュニティのための政策を考える。

ところが選挙権がないコミュニティの場合、そのコミュニティのための政策を打ち出したところで票に結びつかないから選挙に有利に働かない。だからいくら声を上げても優先順位が下がる。不公平と思うがそれが選挙である。

日本で経済界とか農業界とか特定のグループの票を取ろうと必死になって政策を訴える姿を思い出してもらうと分かりやすい。それが出身国コミュニティ単位でも行われるのがカナダの選挙戦である。

ということで、現在のように選挙が近くなると、選挙権のない無力さをいやというほど感じることになる。

選挙前になると何やら???みたいな法案が次々と出てくる。よくよく調べてみると、実は○○系コミュニティがプッシュしていた政策だったりする。そういう意味では数の力があるコミュニティはこういう時に強い。

これから10月に向けてカナダの選挙戦はますます過熱してくる。選挙権がないだけに、第三者的目線で客観視できる点では面白いが、自分が住む国で選挙権がないというつらさをいやというほど味わうことにもなる。

そろそろ母国の選挙権より、在住国の選挙権を優先することを考える時期かもしれない。そうなるとやっぱり母国のことが気になるのだろうなぁ。