カナダ自由党政権唯一の気候変動対策とも言える炭素税は風前の灯か? 地方で導入への抵抗相次ぐ:コラム

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現在連邦政府の炭素税導入に反対を表明する州政府が全国的に増えている。炭素税導入を発表した2016年当時は州政府でも自由党政権が多く、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州のように2008年から全国に先駆けて(当時は北米で初)独自の炭素税を導入しているか、オンタリオ州自由党政権のようにキャップ&トレード制度を採用していた。

ケベック州、アルバータ州でも導入し、カナダの主要経済州が賛同していた。他の州も2016年3月にバンクーバーで開催された環境会議で、概ね協力的な態度を示していた。当初から強く反対していたのはサスカチュワン州のみだった。

しかしその後、全国で州選挙が続々と実施され、自由党政権が軒並み敗北。保守党系政党に政権が取って代わられた。

今年6月のオンタリオ州選挙では進歩保守党が圧勝した。ダグ・フォード州首相が最初に実施した公約がキャップ&トレード制度撤廃だった。選挙戦から炭素税制度に反対を表明していた。

今月実施されたニューブランスウィック州選挙でも自由党が第二党となり、進歩保守党(PC)が少数派ながら第一党となった。PCが政権を取れるかはまだ微妙だが、ブレア・ヒグス党首は連邦政府の炭素税政策に反対の立場でサスカチュワン州のように連邦政府を訴えると表明している。

さらにアルバータ州では今年8月トランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画が裁判所によって計画の見直しを迫られたことで完成が先延ばし、もしくは完成自体が危ぶまれることから、新民主党(NDP)政権が炭素税実施への協力を停止すると発表した。

アルバータNDP政権は、パイプライン計画承認と引き換えに炭素税導入を連邦政府と約束していた。

さらにアルバータでは来年に州選挙を控えている。現在は野党の連合進歩保守党(UPC)の勢いが強く、おそらく政権を取るだろうと予想されている。元々保守が強い州。2015年の選挙でNDPが政権を取った時は誰もが驚いたくらいだった。

UPCジェイソン・ケニー党首は炭素税には否定的。UPCが政権を取れば炭素税は撤回される可能性はかなり高い。

炭素税を含む環境対策に積極的なのは、BC州とケベック州のみ。ケベック州は今月の選挙で中道右派の保守派CAQが圧勝したが、環境対策は引き続き力を入れることを発表している。

BC州は炭素税導入の先駆け的存在で、しかも、2008年当時の自由党政権ゴードン・キャンベル州首相時代に導入している。BC州では自由党はどちらかといえば保守系にあたる。2017年の州選挙で新民主党(NDP)が政権を奪取したが、グリーン党との協力関係で政権が成り立っているため、環境対策は最優先事項の一つ。今年発表される環境対策に注目が集まっている。

こうして全国的な州政府の分布図を見渡してみると、トルドー首相にとっては導入を目前にして炭素税に暗雲が立ち込めている。

今後は、自由党政権がどこまで州政府の反対を押し切って炭素税を実際に導入できるのかに注目が集まる。すでに導入時期の延長を余儀なくされている。炭素税実施自体も危ういかもしれない。

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